作者紹介

・地理人 (今和泉 隆行)
1985年鹿児島市生まれ。その後の多くを東京都日野市で過ごす。通称「地理人」。7歳ごろから、実在しない都市の地図(空想地図)を描く。著書に「みんなの空想地図」(白水社、2013年)。NHKドラマや番組の小道具として架空の地図を制作する他、記事執筆(日経ビジネスオンライン ライター)、情報デザイン、その他大学での授業設計補助、講演、ワークショップ企画を行う。ゼンリン アドバイザー。都市や地図に関する話を日常に届ける新たな形を模索中。

地理人に4つの質問なぜ、空想の地図を描き始めたのですか?
なにしろ小学校1年生の頃で記憶がないのですが、その頃なので、何か目的を持って始めた訳でも、得たい結果があった訳でもなく、ただなんとなく始めたのでしょう。地図は単なる落書きの延長でした。落書きは、目的や結果を伴わず、無目的な遊び、あるいは暇つぶしのようなものだと思いますが、全くそれと似たような経緯だと思います。

無意識に現実がどうなっているのか再現したくなり、それを表す絵として、身近だった地図の形で再現したくなったのでしょう。山村に行けば山村を再現したくなり、区画整理中の住宅地に行けばそれを再現したくなる、見たもの、聞いたものを、どうやって再現するか。「お店とお客さん」の関係を、お店やさんごっこで再現する幼児と同じく、自分の身を使って社会の一端を再現するのです。その手段が地図だったのでしょう。

納得いかなければ消しゴムで消して描き直す・・・その繰り返しです。結果的に途中で納得いかなくなり、少し描いてはやめ、また新しい紙に地図を描きはじめる、その繰り返しでした。

地図を描くのに、どのくらいかかるのですか?
A4大の地図は、頑張れば2〜3日程度でできます。
ただし面積が広く、異なる地域が相互に及ぼす影響とその結果の地域の実態、ディテールを詳細にイメージできていない場合(最初からイメージできることはない)、何度も描き直しをすることになります。

また、こう言ってはおしまいですが、気が進むときしか地図作りは進みません。そのため生産性を測ることができません。現在の中村市地図の改訂版は、全面改訂を始めてから2013年で2〜3年が経ちますが、完成予定は2013年末と3年かかっています。

やっているときは、最高に楽しいですか?
それがまた、そういう感じでもありません。ただ淡々と作業をしている、という感じです。
地図ができると、若干の達成感を得ます。信号機やコンビニ、目印になる建物等細かく表記し、実用性の追求に努めています。しかし実在しませんので、実用性は全くありません。このことに随時気づきながら地図を作るため、何とも言えない虚しさを伴います。ただ、地図で描かれる都市は、現実逃避の舞台、第二の現実として、あらゆる想像を巡らす楽しさはあります。

多少の楽しさはあれど、実際は番地を振ったり、現実的でないところを描き直したり、なかなか面倒な作業が大半を占めます。あまりにも手がかかる割に、特に得られるものが大きくないと感じ、2005年から2010年までの5年間は休止していたほどです。

おもしろがって見ていただく方が増えたことと、2005年版の地図が粗かったことから改訂に乗り出し、現在再び制作作業に入っています。今は、楽しんでいただく方あっての、地図の改訂や制作だと思っております。

そして地図作りはテンションの上がるイベントではなく、淡々と作業するまでですが、私自身は行ったことのない街の地図を見てその街を想像する楽しさと近い感覚で、空想を地図にしてきます。

オススメスポットはありますか?
これはなかなか難しい質問です。
オススメと言っても人によって求めるもの、価値観、感性は異なるため、例えば、「東京でオススメの場所はどこですか?」と言われても、私はうまく答えられません。

加えて、中村市は見所というか観光地に欠ける都市です。どうもパッとしないというか、万人受けするスポットがありません。首都から30km南に進んだ内陸の大都市・中村市は、ビル街、古くからの木造住宅密集地帯、団地、ニュータウン、畑混じりの一戸建て地帯、山、川、緑…とさまざまな環境があり、それらが混在しています。城下町からニュータウンまで、中心都市でありながら同時にベッドタウンである、そんな都市の細やかな日常を映しています。

私自身、特定の場所に思い入れがある訳ではなく、都市に対しては俯瞰に徹しています。これは都市全体を見る上でのマクロな視点になりますが、描いているときは細やかなディテールに迫りますので、ニュータウンを描いているときはニュータウン住民になりきり、中心部を描くときは中心部住民、あるいは何かの用で頻繁に中心地に来る人になりきります。その時その時で描いている舞台を日常化しながら描いています。

地図をご覧になる方は、ご自身が心地良いと思う日常や、馴染みのある日常を浮かべていただき、その目線で地図を見ていくと、だんだんこの街の日常が自分のものになってきます。どこか身近に感じられる日常を地図上で見つけたら、そこがオススメスポットです。